脚本家独学09 おすすめ名作映画はなぜつまらないのか

脚本の参考書を読むと、名作映画を観るように紹介されていることが多いです。実際に名作映画を観ると、あまり面白くないことがあります。面白いとすすめられているのに面白くないのは、感受性が乏しいので、物語を作るのに向いてないのではないかと不安になりますが、面白くないのには理由があります。

私の場合は映画「がんばれ!ベアーズ」がそんな感じでした。映画「がんばれ!ベアーズ」を観たときに、面白いけれど、そこまですすめるほど面白いとは思わなかったです。なぜかと言うと、映画「がんばれ!ベアーズ」を観るちょっと前に映画「飛べないアヒル」を観ていたからです。

映画「がんばれ!ベアーズ」は1976年、映画「飛べないアヒル」は1992年に制作されました。映画「がんばれ!ベアーズ」は監督の指導で子供たちが協力して野球の試合をする映画です。映画「飛べないアヒル」は監督の指導で子供たちが協力してアイスホッケーの試合をする映画です。すごく似ています。

映画「がんばれ!ベアーズ」は大ヒットし、続編が制作されました。映画「がんばれ!ベアーズ」と同じような設定の映画も大量に作られました。映画「飛べないアヒル」もその中の一つです。設定が現代的になり、映画の撮影技術が向上し、脚本術も広まった後の作品なので、完成度も高いです。

もし映画「がんばれ!ベアーズ」を観た後だったら、映画「飛べないアヒル」をそれほど面白くないと思っていたでしょう。新鮮さの問題です。映画「がんばれ!ベアーズ」の方が有名ですが、映画「飛べないアヒル」も3作目まで続編が制作されるほど人気で、どっちも面白い名作映画です。

日本映画では寅さんで有名な映画「男はつらいよ」が何作も続編が制作された名作映画です。私は観たことがなかったので、一気見しました。人情喜劇と思っていたら、全然そんなことはないふざけた内容で面白かったです。ただ、初めの方の何作品かはそれほどでもないと思いました。

初めの方の作品だけで諦めてしまうと面白くないと思ってしまうでしょう。何作品も作られて作風が定まってきてからは、主役の寅さんが海賊船の船長だったり、宇宙人だったり、遊びの部分もあって楽しいです。嫌われ者の寅さんが毎回一目惚れして、最後に振られるというパターンも安心して観れます。

映画「男はつらいよ」の人気ランキングでは第15作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」の人気が高いですが、人気のものだけ観てもそれほど面白くありません。第11作に出てきた人物が再登場し、今までのパターンと違うことをやって、今までの作品が振りになるからこそ面白い作品だからです。

長いシリーズの物語は、知ったかぶった人が「この順番で観ればいい」などと言ってきたり、ランキングの面白い順で観たくなったりしますが、公開された順番に観た方が楽しめます。長く続いている作品はだいたい面白いので、とりあえず全部観た方がいいです。面白くなかったら、長く続きません。

小説「そして誰もいなくなった」は何度も映画化されていますが、小説に比べると映画は全然面白くないです。原作が面白いから映画も面白いとは限らないし、映画化されたときに改変される場合が多いです。評価されているものは、評価されたメディアで楽しんだ方がいいです。

他にも面白くないと思う名作映画はあるでしょうけど、これも理由があります。世の中には物語があふれています。例えば、子供向けアニメだったり、ゲームだったり、ショート動画だったり、観た記憶はないのに、名作映画に影響されて作られた物語を何らかの形ですでに観ている場合が多いです。

また、映画監督や脚本家が「SAVE THE CATの法則」のように映画の面白い要素を分析してまとめた参考書を読んで作られた映画は、作者も知らない間に名作映画のテクニックを使っています。「SAVE THE CATの法則」で分析されているように名作映画と似たような構成の映画はたくさんあります。
脚本家独学07 SAVE THE CATの法則では脚本を書けない
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