脚本書き方03 脚本のト書きの例と以下カットバックの書き方

ト書きの例と便利な使い方を紹介します。ト書きとは、場所の指定やセリフではない文章のことです。

ト書きは空白3文字の後に書きます。空白2文字のト書きの人もいましたが、シナリオコンクールがサンプルとして掲載する脚本はほとんど空白3文字のト書きです。月刊ドラマは空白2文字のト書きですが、空白1文字のト書きと空白3文字のト書きの人がいたので、間の空白2文字のト書きにしたそうです。

ト書きを工夫すれば、誰が読んでも分かりやすくなります。初めに誰でも知ってる物語と同じとト書きで説明すれば、わざわざ詳しく説明する必要が無くなります。浦島太郎のパロディのつもりで書いたなら、ト書きにそう書いておけば、脚本を読む人も浦島太郎みたいな感じとイメージしやすくなります。
○砂浜
   若い男がヒモで縛られた縦30cm横20cmぐらいの長方形の箱のヒモをほどく。
   箱の中から煙が出てきて、若い男の全体が見えなくなるぐらい煙に覆われる。
若い男「うわっ」
   若い男は白髪になり、ひげが生え、おじいさんのような見た目に変わっていた。
○砂浜
   以下、浦島太郎のパロディ。
   若い男が玉手箱のような箱のヒモをほどくと、中から煙が出てくる。
若い男「うわっ」
   若い男はおじいさんになった。

脚本の書き方は初心者には難しく、こういう場合のト書きはどう書けばいいのか、私もシナリオスクールで質問していました。プロの脚本家の脚本のト書きを読んで分かったのは、質問する内容をそのままト書きに書けばいいということです。こういう風な感じとそのままト書きに書いた方が分かりやすいです。
   以下、シンデレラがガラスの靴が脱げたけど、時間が無いので走っていく感じ。
   以下、アンパンマンのパンチでバイキンマンが遠くに吹っ飛ばされるような感じ。
   以下、UFOから光が出て牛が空中に浮いていくような感じ。
   以下、好きな子が海外に行くので、土砂降りの雨の中、空港に走って行く感じ。

思っている以上に脚本だけでは読んでいる人にイメージが伝わらないので、ト書きで説明する必要があります。監督がイメージと違うものを撮影したと、脚本家がドラマ放送後に脚本の意図を説明して謝罪することもあります。ト書きで説明しないと、ほとんど伝わらないと思った方がいいです。

ト書きで説明した方がすっきりします。セリフの中で説明すると、読みづらくなります。ト書きの「以上」はシーンの途中でト書きの「以下」で説明した内容が終わる時に書きます。ト書きの「以下」はシーンが終わるとそこで終わりなので、シーンの終わりまでならト書きの「以上」を書かなくていいです。
ミスターX「(機械音のような喋り方で)さあ、ゲームを始めよう」
若い男「お前は何者なんだ?」
ミスターX「(機械音のような喋り方で)俺の顔を見ろ」
   ミスターXは仮面を外す。ミスターXは愛子だった。
愛子(ミスターX改め)「私でした!」
若い男「誰だ?」
愛子「えっ!」
   以下、ミスターXはずっと機械音のような喋り方。
ミスターX「さあ、ゲームを始めよう」
若い男「お前は何者なんだ?」
ミスターX「俺の顔を見ろ」
   以上、ミスターXは機械音のような喋り方終わり。
   ミスターXは仮面を外す。ミスターXは愛子だった。
   以下、これ以降、ミスターXは愛子として書く。
愛子「私でした!」
若い男「誰だ?」
愛子「えっ!」

面倒なことは初めにト書きで説明すれば、毎回説明する必要が無くなります。
   以下、愛子は物音がするたびに驚く。
   以下、愛子は緊張で喋るたびに声のキーが高くなっていく。

登場人物の特徴などの場合は登場した時にト書きで一緒に説明してしまった方が簡単です。登場人物が初めて登場する時はト書きで、フルネーム、年齢を書きます。ふりがな、職業、特徴は省略してもいいですが、あった方が親切です。脚本の中に書いてあれば、登場人物表をわざわざ見なくていいです。
   以下、この物語の間ずっと、愛子はそわそわしている。
   いつもそわそわしている女子大生の雀犬愛子(じゃんけん あいこ)(23)が来る。

シナリオコンクールでは、1行20字が多いです。1行20字の場合でも、ト書きの最後が「)」や「、」のときは21字になってもいいです。ト書きが続く場合は、1行空白を入れてもいいです。ト書きは読みやすさを最優先に考えます。

ト書きの名前や年齢は改行されると読みづらいので、ト書きの途中で読みやすく改行してもいいです。名前の途中で改行されると、名前を変更したい場合に、検索で発見できず、置換もされないので、古い名前のまま残ってしまうミスがよくあります。
   いつもそわそわしている女子大生の雀
   犬愛子(じゃんけん あいこ)(23)
   が来る。
   若い男は愛子を見つけると、走って逃
   げる。
   雀犬愛子(じゃんけん あいこ)(2
   3)が来る。愛子は、女子大生で、い
   つもそわそわしている。
   若い男は愛子を見つけると、走って逃
   げる。
   雀犬愛子(じゃんけん あいこ)
   (23)が来る。愛子は、女子大生で、
   いつもそわそわしている。

   若い男は愛子を見つけると、走って逃
   げる。

他に便利なト書きにカットバックがあります。

普通なら2人の家を何度も柱で書かないといけないですが、長くなるので、ト書きで以下カットバックと宣言することで、柱を書かなくてよくなります。この場合は交互に映像にするのか、同じ映像の中に二人同時に映るのか、撮影する監督が判断して決めます。どちらかにしてほしい場合はト書きで指定します。
○若い男の家
   若い男が電話をかける。
若い男「もしもし、愛子」

○愛子の家
愛子「あら、若い男。どうしたの?」

○若い男の家
若い男「実は話したいことが」

○愛子の家
愛子「分かったわ、別れましょう」

○若い男の家
若い男「付き合ってないだろ!」
○若い男の家
   若い男が電話をかける。
若い男「もしもし、愛子」

○愛子の家
愛子「あら、若い男。どうしたの?」

   以下、カットバック。
若い男「実は話したいことが」
愛子「分かったわ、別れましょう」
若い男「付き合ってないだろ!」

カットバックは2人が電話しているときによく使われます。2人だけでなく、別々の場所にいる5人が短時間に素早く連絡を取り合う場合や、試合をしている選手と対戦相手と監督などの場合にも使えます。

最近は脚本の専門用語を使わない傾向があるので、「以下、カットバック。」ではなく
   以下、2人が交互に喋る。
とかでいいです。カットバックをCBと略すのだけはやめましょう。手書きの時代にカットバックと書くのが面倒で略して書いていたものです。脚本の専門用語は他にもありますが、特にアルファベットだけの略語は分かりづらく、何の意味か一瞬考えないといけないので、脚本を読む人のストレスになります。

シナリオコンクールでは、若い人の意見も取り入れないといけないと思って、若手の社員やドラマ以外の部署の社員に最終審査に残った脚本の感想を聞いて参考にすることもあります。脚本の勉強をしていない人が読んでも分かる程度に、分かりやすくする必要があり、ト書きの説明はそのためにも重要です。

プロの脚本家でト書きに、この動画みたいな感じとYoutubeアドレスを載せている人もいました。この辺でCMを入れてとト書きで指定する脚本家もいます。何でもいいです。伝えたいことはト書きで説明します。難しい表現より伝わることが大事です。分かりやすく自分の考えを伝えるためにト書きを使います。
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