脚本の直し02 シナリオスクールの課題の脚本
シナリオスクールのシナリオ・センターでは半年間、授業と課題の宿題がありました。その後、脚本を他の生徒の前で朗読して感想を聞くコースに行きました。これは初めて発表した脚本です。シナリオスクールでの生徒の意見は細かい内容はともかく好きな脚本という感じでした。
シナリオ・センター20枚シナリオ
課題・魅力ある男
タイトル「損益決算書」
人 物
篠原賢治(36)簿記の先生
東山孝男(17)学生
高倉早苗(17)学生
杉浦純平(17)学生
東山幸造(36)孝男の父親
北上和夫(52)校長先生
○八百屋・東山青果店・店先
小さな店内。野菜が並んでいる。
スーツ姿の篠原賢治(36)が野菜を選んでいる。
八百屋の東山幸造(36)が話しかける。
東山「さあ、今日はキュウリが安いよ。どうだい。普段の二割引だよ」
篠原、さっとポケットから電卓を出し、計算する。
篠原「昨日は二百十円、今日は百七十円。ということは、二割引ではなく一割九部引きでしょ」
東山「そんなこと言わないで、買ってってよ」
篠原、電卓で計算する。
篠原「二割引の百六十八円なら買うけど」
と、ニヤッとして歩いていく。
東山「ちっ、やな客だな。毎日計算ミスを指摘しやがる」
孝男の声「あれ、うちの担任だよ」
東山、振り返ると息子の東山孝男(17)がいる。
東山「お前は早く言えよ。だったらただであげたのに。これ持ってけ」
と、キュウリの束を孝男に渡す。
○東品川高校・全景(朝)
夏。セミが鳴いている。
○同・教室・中(朝)
簿記の授業中。
高倉早苗(17)と隣の席の杉浦純(17)がうちわで扇ぎながら喋っている。
純平「(小声で)早く終わんねえかな」
早苗、うちわで口元を隠しながら
早苗「月曜の朝からこの授業はきついよね」
先生の篠原が黒板に板書しながら、教科書を読んでいる。
篠原「簿記では、借りた分と貸した分は差し引き0にしないといけません。実際に」
篠原、急に話をやめ、寝ている孝男の席まで歩いていく。
篠原、孝男を揺すって起こす。
篠原「おい、授業中に寝るって、どういうつもりだ。一分当たり十六円として、その負債を計算しなさい」
孝男、あたふたしている。
純平「(小声で)ウゼー、ああいうの。ほんとむかつくな。面白いと思ってんのかよ。あいつが担任じゃなかったら殴ってるな」
早苗「(小声で)東山君、昨日も店の手伝いしてたのよ。ちょっとぐらい寝かせてあげればいいのに」
純平「ダメダメ、ああいうタイプの奴は融通利かないんだって。電卓で計算するのが趣味なんだろう。そうじゃなきゃ簿記の先生なんてなろうと思わないよ」
篠原、早苗と純平の方を見て
篠原「おい、そこ。うるさい。授業を妨害したら、いくらの負債になると思ってるんだ」
○同・屋上(夕)
早苗と純平の前に孝男が立っている。
孝男、「京都・大文字鑑賞ツアー」と書いてあるパンフレットを持っている。
孝男「俺、やっぱり無理だ」
と、パンフレットを早苗に渡す。
早苗「どうしてよ。あんなに楽しみにしてたのに」
純平「そうだよ。京都に行きたいって言い出したの、お前だろ」
孝男「頼む、二人で行ってくれ。父ちゃんが入院しちゃって、もしかしたら学校も辞めるかもしれないんだ。ほんとにごめん」
と、走っていく。
純平「どうする?」
早苗「やるしかないでしょ。私たちの手で京都に行かせてあげましょうよ」
純平「どうやって?」
早苗「今週の金曜日って職員会議で夕方から誰も先生いなかったはずよ」
純平「ああ」
早苗「私が夜、学校に孝男君を呼び出すから」
○東品川高校・全景(夜)
T・金曜日。
○同・教室・中(夜)
真っ暗。
孝男、入ってくる。
急に電気が点く。
壁には、お寺や五重塔の写真が貼ってある。
舞妓姿の早苗が歩いてくる。
孝男「どうしたんだ?」
早苗「京都へ、ようこそお越しやす」
孝男に京都名物の八橋を渡す。
早苗「どうぞ、お食べやす」
孝男、八橋を食べる。
早苗「ねえ、外、見て」
窓の外を指差す。
運動場が明るくなっている。
○同・運動場(夜)
大の字に張った糸が燃えている。
そばで純平が手を振っている。
○同・教室(夜)
早苗と孝男、窓から運動場を見て、手を振っている。
早苗「きれいね」
孝男「ああ」
早苗「京都と言えば大文字焼きでしょ。どう、京都気分は味わえた?」
孝男「ありがとう、何てお礼を言えばいいか」
と、泣き出す。
早苗「いいから、いいから」
孝男、窓の外を見て唖然とする。
早苗「どうしたの?」
孝男「おい、あれ!」
孝男、窓から身を乗り出して運動場を見る。
○同・運動場(夜)
大の字に張った糸が燃えている。
火が草むらに燃え広がり、純平が必死に足で踏んで消そうとしている。
風が吹いて、火があっという間に校舎に燃え移る。
消火器を持った早苗と孝男が慌てて走ってくる。
そこら中に消火器を撒くが、火の勢いは収まらない。
非常ベルが鳴る。
必死で火を消そうとするが、どんどん燃え広がる。
校舎の窓ガラスが割れる。
消防車の音。
○同・全景(朝)
運動場と校舎の一部が黒くこげている。
その周りに立ち入り禁止の柵がしてある。
○高倉家・早苗の部屋(夕)
早苗、ベットで寝転んでテレビを見ている。携帯電話が鳴る。
早苗、電話に出て
早苗「純平、どうしたの? 暇だからって何回も電話しないでよ。あんたのせいで停学になったんだからね。分かってるの? ――えっ、先生が辞めた!」
早苗、立ち上がる。
早苗「分かったすぐ行く」
○東品川高校・校長室・中(夕)
早苗と純平が駆け込んでくる。
校長の北上和夫(52)が座っている。
早苗「どういうことですか? 修理代なら私たちがバイトして弁償します!」
北上「篠原先生が全額払ってくれたよ」
唖然とする早苗と純平。
北上「別に君たちの責任を取って辞めた訳じゃないんだ。借りを返しに行くそうだ」
早苗「借り?」
北上「よく分からないけど、それだけしか聞いてないんだ。それからこれ、預かってる」
と、早苗に封筒を渡す。
○同・屋上(夕)
封筒を持つ早苗の横に純平がいる。
早苗、封筒を開ける。
中から紙が出てくる。
早苗「ガラス代十万五千円、ペンキ代三万三千円、何これ?」
紙にずらっと修理代の内訳が書かれている。
純平「裏になんか書いてあるぞ」
と、紙の裏を指刺す。
早苗、裏を見て、読む。
篠原の声「簿記では、借りた分と貸した分は差し引き0にしないといけません」
早苗、修理代の最後を見る。
修理代合計百万円、友情百万円、差し引き0円と書かれている。
早苗「篠原先生、今頃どうしてるんだろう」
○八百屋・東山青果店・店先(夕)
八百屋のエプロンをした篠原が電卓を持って立っている。その横に孝男。
孝男「先生、お客さん来たよ」
篠原「いいから中に入って、勉強してなさい。いらっしゃいませ」
主婦っぽいお客さんが歩いてくる。
お客さん「そうね~。トマトとキャベツとキュウリ、貰おうかしら」
篠原、すばやく電卓をはじいて
篠原「五百三十円です。あ、奥さん可愛いから十五%引きの四百五十円でいいや」
篠原とお客さん、笑う。
孝男「意外といけるかも」
シナリオ・センター20枚シナリオ
課題・魅力ある男
タイトル「損益決算書」
人 物
篠原賢治(36)簿記の先生
東山孝男(17)学生
高倉早苗(17)学生
杉浦純平(17)学生
東山幸造(36)孝男の父親
北上和夫(52)校長先生
○八百屋・東山青果店・店先
小さな店内。野菜が並んでいる。
スーツ姿の篠原賢治(36)が野菜を選んでいる。
八百屋の東山幸造(36)が話しかける。
東山「さあ、今日はキュウリが安いよ。どうだい。普段の二割引だよ」
篠原、さっとポケットから電卓を出し、計算する。
篠原「昨日は二百十円、今日は百七十円。ということは、二割引ではなく一割九部引きでしょ」
東山「そんなこと言わないで、買ってってよ」
篠原、電卓で計算する。
篠原「二割引の百六十八円なら買うけど」
と、ニヤッとして歩いていく。
東山「ちっ、やな客だな。毎日計算ミスを指摘しやがる」
孝男の声「あれ、うちの担任だよ」
東山、振り返ると息子の東山孝男(17)がいる。
東山「お前は早く言えよ。だったらただであげたのに。これ持ってけ」
と、キュウリの束を孝男に渡す。
○東品川高校・全景(朝)
夏。セミが鳴いている。
○同・教室・中(朝)
簿記の授業中。
高倉早苗(17)と隣の席の杉浦純(17)がうちわで扇ぎながら喋っている。
純平「(小声で)早く終わんねえかな」
早苗、うちわで口元を隠しながら
早苗「月曜の朝からこの授業はきついよね」
先生の篠原が黒板に板書しながら、教科書を読んでいる。
篠原「簿記では、借りた分と貸した分は差し引き0にしないといけません。実際に」
篠原、急に話をやめ、寝ている孝男の席まで歩いていく。
篠原、孝男を揺すって起こす。
篠原「おい、授業中に寝るって、どういうつもりだ。一分当たり十六円として、その負債を計算しなさい」
孝男、あたふたしている。
純平「(小声で)ウゼー、ああいうの。ほんとむかつくな。面白いと思ってんのかよ。あいつが担任じゃなかったら殴ってるな」
早苗「(小声で)東山君、昨日も店の手伝いしてたのよ。ちょっとぐらい寝かせてあげればいいのに」
純平「ダメダメ、ああいうタイプの奴は融通利かないんだって。電卓で計算するのが趣味なんだろう。そうじゃなきゃ簿記の先生なんてなろうと思わないよ」
篠原、早苗と純平の方を見て
篠原「おい、そこ。うるさい。授業を妨害したら、いくらの負債になると思ってるんだ」
○同・屋上(夕)
早苗と純平の前に孝男が立っている。
孝男、「京都・大文字鑑賞ツアー」と書いてあるパンフレットを持っている。
孝男「俺、やっぱり無理だ」
と、パンフレットを早苗に渡す。
早苗「どうしてよ。あんなに楽しみにしてたのに」
純平「そうだよ。京都に行きたいって言い出したの、お前だろ」
孝男「頼む、二人で行ってくれ。父ちゃんが入院しちゃって、もしかしたら学校も辞めるかもしれないんだ。ほんとにごめん」
と、走っていく。
純平「どうする?」
早苗「やるしかないでしょ。私たちの手で京都に行かせてあげましょうよ」
純平「どうやって?」
早苗「今週の金曜日って職員会議で夕方から誰も先生いなかったはずよ」
純平「ああ」
早苗「私が夜、学校に孝男君を呼び出すから」
○東品川高校・全景(夜)
T・金曜日。
○同・教室・中(夜)
真っ暗。
孝男、入ってくる。
急に電気が点く。
壁には、お寺や五重塔の写真が貼ってある。
舞妓姿の早苗が歩いてくる。
孝男「どうしたんだ?」
早苗「京都へ、ようこそお越しやす」
孝男に京都名物の八橋を渡す。
早苗「どうぞ、お食べやす」
孝男、八橋を食べる。
早苗「ねえ、外、見て」
窓の外を指差す。
運動場が明るくなっている。
○同・運動場(夜)
大の字に張った糸が燃えている。
そばで純平が手を振っている。
○同・教室(夜)
早苗と孝男、窓から運動場を見て、手を振っている。
早苗「きれいね」
孝男「ああ」
早苗「京都と言えば大文字焼きでしょ。どう、京都気分は味わえた?」
孝男「ありがとう、何てお礼を言えばいいか」
と、泣き出す。
早苗「いいから、いいから」
孝男、窓の外を見て唖然とする。
早苗「どうしたの?」
孝男「おい、あれ!」
孝男、窓から身を乗り出して運動場を見る。
○同・運動場(夜)
大の字に張った糸が燃えている。
火が草むらに燃え広がり、純平が必死に足で踏んで消そうとしている。
風が吹いて、火があっという間に校舎に燃え移る。
消火器を持った早苗と孝男が慌てて走ってくる。
そこら中に消火器を撒くが、火の勢いは収まらない。
非常ベルが鳴る。
必死で火を消そうとするが、どんどん燃え広がる。
校舎の窓ガラスが割れる。
消防車の音。
○同・全景(朝)
運動場と校舎の一部が黒くこげている。
その周りに立ち入り禁止の柵がしてある。
○高倉家・早苗の部屋(夕)
早苗、ベットで寝転んでテレビを見ている。携帯電話が鳴る。
早苗、電話に出て
早苗「純平、どうしたの? 暇だからって何回も電話しないでよ。あんたのせいで停学になったんだからね。分かってるの? ――えっ、先生が辞めた!」
早苗、立ち上がる。
早苗「分かったすぐ行く」
○東品川高校・校長室・中(夕)
早苗と純平が駆け込んでくる。
校長の北上和夫(52)が座っている。
早苗「どういうことですか? 修理代なら私たちがバイトして弁償します!」
北上「篠原先生が全額払ってくれたよ」
唖然とする早苗と純平。
北上「別に君たちの責任を取って辞めた訳じゃないんだ。借りを返しに行くそうだ」
早苗「借り?」
北上「よく分からないけど、それだけしか聞いてないんだ。それからこれ、預かってる」
と、早苗に封筒を渡す。
○同・屋上(夕)
封筒を持つ早苗の横に純平がいる。
早苗、封筒を開ける。
中から紙が出てくる。
早苗「ガラス代十万五千円、ペンキ代三万三千円、何これ?」
紙にずらっと修理代の内訳が書かれている。
純平「裏になんか書いてあるぞ」
と、紙の裏を指刺す。
早苗、裏を見て、読む。
篠原の声「簿記では、借りた分と貸した分は差し引き0にしないといけません」
早苗、修理代の最後を見る。
修理代合計百万円、友情百万円、差し引き0円と書かれている。
早苗「篠原先生、今頃どうしてるんだろう」
○八百屋・東山青果店・店先(夕)
八百屋のエプロンをした篠原が電卓を持って立っている。その横に孝男。
孝男「先生、お客さん来たよ」
篠原「いいから中に入って、勉強してなさい。いらっしゃいませ」
主婦っぽいお客さんが歩いてくる。
お客さん「そうね~。トマトとキャベツとキュウリ、貰おうかしら」
篠原、すばやく電卓をはじいて
篠原「五百三十円です。あ、奥さん可愛いから十五%引きの四百五十円でいいや」
篠原とお客さん、笑う。
孝男「意外といけるかも」
傾向と対策