傾向と対策09 シナリオコンクールの傾向と対策

どのシナリオコンクールでも同じ傾向があります。前回の大賞受賞作と同じ傾向の脚本は大賞を受賞できないです。例えばコメディが大賞を受賞したとします。今回もコメディが大賞を受賞したら、どうなるでしょうか。コメディが大賞を受賞しやすいと思われ、コメディばかり応募されるようになります。

同じ傾向の脚本ばかりが集まるのを避けるために、シナリオコンクールの審査員は前回の大賞受賞作と同じ傾向の脚本を避ける傾向があります。審査員は毎回ほぼ同じなので、圧倒的に面白い同じ傾向の脚本が応募されない限り、前回と同じ傾向の脚本はシナリオコンクールで大賞を受賞できません。

これは同じシナリオコンクール内でも言えます。大賞がコメディなら佳作は恋愛ものとか違う傾向が多いです。月刊ドラマには、審査員の座談会が掲載されていますが、審査員は受賞作が幅広い傾向の脚本だと喜び、コメディばかりが続いたときは、コメディシナリオ大賞になってしまうと嘆くこともありました。

シナリオコンクールに応募する人たちの方にも問題もあります。シナリオコンクールに応募する人は前回の受賞作の脚本を読んで、ネットで傾向を検索し、その傾向が受賞しやすいと思い込んで、同じ傾向の脚本を書いて応募してしまいます。その結果、大量に同じような傾向の脚本が応募されることになります。

シナリオコンクールでは同じような傾向の脚本が他にあるのは致命的な欠点で評価されません。では、傾向と対策で何をすればいいのか。過去の受賞作と同じような脚本を書くことが傾向と対策ではありません。過去の受賞作の傾向を理解した上で、違う対策をするのがシナリオコンクールの傾向と対策です。

私の例で言うと、ラジオドラマのシナリオコンクールで過去の受賞作からヒューマンの脚本が多いと傾向を調べました。その対策として、ラジオドラマのシナリオコンクールなのにセリフがほとんどなく、登場人物はほぼ一人だけのサスペンスの脚本を書いてシナリオコンクールに応募しました。

この対策は見事に当たり、審査員の講評でほぼ同じ実力と評価されたヒューマンの脚本より、私のサスペンスの脚本が受賞することになりました。もし私以外の他の誰かが同じように登場人物がほぼ一人だけのサスペンスの脚本を書いて応募しても受賞できていたでしょう。これが傾向と対策です。

この対策は失敗したこともあります。短いラジオドラマのシナリオコンクールに多くの登場人物が出てくる脚本を応募しました。審査員の講評で登場人物が多過ぎると言われ大賞を逃し、佳作になりました。翌年のシナリオコンクールでは主要登場人物は3人以内と応募条件に追加されてしまいました。

このブログはシナリオコンクール前に傾向と対策で検索されることが多いですが、ネットに傾向と対策なんてありません。先ほどの例で言うと、シナリオコンクール前に、このシナリオコンクールはヒューマンの傾向があるので、対策として登場人物一人のサスペンスの脚本がいいと私がブログに書いたとします。

それを信じた人が登場人物一人のサスペンスの脚本を応募したら、信じて応募した人も私もどちらも受賞できなくなります。同じような傾向の脚本があると、シナリオコンクールで大賞を受賞できる確率は一気に下がります。たった一人しかいないから、シナリオコンクールの傾向と対策は効果があるのです。

自分一人で傾向と対策を考え、そのことを誰にも言わないのが傾向と対策です。シナリオコンクールに応募する人は仲間に傾向と対策を教えたりしますが、自分も教えられた人もシナリオコンクールで大賞を受賞する確率が低くなります。みんなに言いふらしてる傾向と対策なんて逆効果にしかなりません。

私はシナリオコンクールで受賞して授賞式の後に審査員の人と話したことがありますが、同じ傾向の脚本が多く、どこかのシナリオスクールで対策を教えてるんじゃないかと怒っていました。シナリオコンクールの審査員は同じ傾向の脚本ばかり読みたくないのです。
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